PTSDの歴史3 -暴力・虐待など-
戦闘ストレス反応が認められ、社会で広く知られるようになったその頃、世界的に「フェミニズム」や「ウーマンリブ」という運動が盛んに行われるようになりました。
どちらも女性に対する性差別の撤廃を求める女性たちによる運動で、この時代、女性は男性同様に様々な権利を獲得していきました。
その流れの中で、新たな女性の問題として明らかになったのがレイプや家族からの虐待によるストレス反応です。
1970年代に、アメリカでレイプ被害者を対象とした研究が始まりました。
そして、被害者の女性がその後味わう心理状態が戦闘ストレス反応を示す兵士たちのそれと同質のものであることがわかり、レイプされることによって後に起こる反応を「レイプ・トラウマ反応」を呼ぶようになりました。
「レイプ・トラウマ反応」の概念はフェミニストたちに支持され、その後の研究に拍車をかけました。
1980年、米国精神医学会が示す精神疾患に関する診断基準の中に、新しく「PTSD」という項目が設けられました。
この時を境に、暴力・虐待によるストレス反応が広く認められるようになったのです。
現在も「DV(ドメスティック・バイオレンス)」や「ネグレクト(育児放棄)」などの形でトラウマ反応の元となる様々な問題があります。
それらの問題を心理学的・精神医学的側面から対処していく基盤は、この時代に築かれたのです。