PTSDの歴史1 -黎明期-
PTSDをはじめとするストレス障害の研究の歴史は、19世紀後半に遡ります。
つまり、PTSDに関する研究が始まって、まだ150年ほどしか経っていないのです。
当時、フランスの神経科医、ジャン・マルタン・シャルコーは女性のヒステリー研究を行っていました。
そしてこれが後に、PTSDという概念を形成していくことになります。
それまで女性の「詐病」といわれていたヒステリーにシャルコーは注目し、ヒステリー症状を持つ女性に特有の症状があることを発見しました。
健忘、感覚麻痺などです。
シャルコーは女性のヒステリー症状の統計をまとめ、その中から一つの答えを導き出しました。
「ヒステリー症状は、外傷的要因によって起こる心理的反応である」ということです。
シャルコーは、女性のヒステリーを詐病ではなく心理的な疾患として捉えました。
現在では既に「ヒステリーは解離症状の一つ」と認識されていますが、元を辿ればシャルコーこそ、その概念の確立した人物なのです。
これらの症状は研究がさらに進み、シャルコーの弟子であるピエール・ジャネやジークムント・フロイトは、患者との対話の中で、徐々にその実態を明らかにしていきました。
そして、一人の中に起こる様々な心理的反応をまとめ、「解離」という概念が確立されました。
こうして、後のPTSD研究のための基盤が作られたのです。