PTSDとウルバッハ・ビーテ病

「ウルバッハ・ビーテ病」とは、扁桃体が破壊されて起こる脳障害の一つです。

「扁桃体」とは、側頭葉内側の奥にある神経細胞の固まり(前述「PTSD/ASDになる原因」->「脳内トラブル」参照)で記憶処理などを担当するほか、恐怖などの感情なども処理しています。

ですから、扁桃体が損傷すると、恐怖に対する感情に障害が生じ、結果的に恐怖を感じなくなるのです。

アメリカでは、ウルバッハ・ビーテ病を発症した通称「SM」さんのデータが公開されていますが、それによると、SMさんは、爬虫類系のペットショップで普通の人なら怖がるヘビやタランチュラに興味をもち、自分から近づいていったそうです。

また、強盗に襲われてナイフを突きつけられても恐怖を一切感じなかったといいます。

しかし、SMさんが生まれながらにして恐怖心を一切感じなかったのではないようで、幼い頃には暗い所や犬が怖く、後天的に何かをきっかけにしてウルバッハ・ビーテ病にかかったものと思われます。

最近の研究では、ウルバッハ・ビーテ病でも、例えば炭酸ガスを含む空気の中にいるとパニックを起こすなど、全ての恐怖を感じないわけではないことがわかってきています。

しかし、いずれにしても、SMさんが病によって恐怖心を感じないという事実を受けて、ウルバッハ・ビーテ病のメカニズムと扁桃体の構造を解明することで、PTSDで苦しむ人たちの治療に役立つ研究成果が得られるのではないかと期待されています。

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