戦争体験による原因

戦争体験によるPTSDの発症は、PTSDの研究そのものが進む大きなきっかけになりました。

特にベトナム戦争帰還兵の問題がPTSD研究を大いに促進しましたが、それに続く湾岸戦争、アフガン戦争などでも同様にPTSDを発症する兵士の問題が社会全体の問題となり、更なる研究を促すことになりました。

戦争体験では、被害者だけでなく、加害者にも大きなトラウマを残します。

戦争で逃げ惑う人々同様に、戦争で人殺しに加担した兵士たちも、その後、被害者たちが蘇るような錯覚やフラッシュバック、戦争体験の悪夢で苦しむのです。

特に、義務教育で培った正義や道徳の概念が、かえって心の葛藤を大きくしているものと思われます。

2001年の世界同時多発テロ後、正義に燃える若者が数多く志願兵になりました。

しかし、いくら正義に燃えても、現地では自分の意思を踏みにじり、自ら残虐な光景を生み出し人を殺し続けるのです。

勿論、単純に日々、目の当たりにする残虐な光景がフラッシュバックすることもあるでしょう。

しかし、兵士の多くが苦しむのは、そのような光景だけでなく、危害を加えた時の経験なのです。

そうすると、自分の価値観が揺らぎ、精神のバランスを崩し、日常生活に支障をきたすようになります。

戦争体験は通常の人間の耐久力や対応能力を越えた日々に身を置くことであり、その中で心が壊れていくのはごく当然の成り行きともいえるのです。

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